Blissful Touch ―ダンスをもっと美しく、もっとナチュラルに。

ダンサーのためのコンディショニング・サロン「ブリスフル・タッチ」公式ブログ。ヒトが0歳児の時に行う原始的運動メニューを分析し発展させた運動プログラム「ナチュラリゼーション」を中心に、ダンサーの皆様と地域の皆様の美しく健やかな身体づくりをサポートしています。

初々しさ

よく引用させて戴く長田弘さんと並んで
好きな詩人は茨木のり子さん。

パリッと糊の効いたシャツの内に
繊細なレースのインナーがあるような感性で
美しきものを綴り出したこの詩「汲む」と
自分の感受性くらい」は特に好きな詩ですが
昨夜、強まる雨音を聴きながらこの詩を味わっていて
ここに表されたY・Yという女性はきっと
とてもナチュラルな動きをした方なのだろうと
思わずにはいられませんでした。

 

汲む
 ―Y・Yに―

大人になるというのは
すれっからしになることだと
思い込んでいた少女の頃
立居振舞の美しい
発音の正確な
素敵な女のひとと会いました
そのひとは私の背のびを見すかしたように
なにげない話に言いました

初々しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき
堕落が始るのね 墜ちてゆくのを
隠そうとしても 隠せなかった人を何人も見ました

私はどきんとし
そして深く悟りました

大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました
たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです

茨木のり子 「汲む」現代詩文庫20 茨木のり子詩集 思潮社

身体感覚と心情には通じ合うところがあると思うのです。
年老いて、すごいと言われるような動きができないとしても
日常の中の立ち居振る舞いに
幼き頃の自然な動きが根付いているから
その居心地はココロの「初々しさ」にも繋がるのではないかと。

このところの肘の感触のひとつですら
それがナチュラルさを取り戻していくほどに
些細な動作の感触からも
初々しい心もちを思い出さされるような気がしていて…。

ナチュラリゼーションを通じて
自分の中の初々しさを忘れない動きを取り戻し
そして育み続けながら
歳を重ねていきたいと思います。

 

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茨木のり子詩集 (現代詩文庫 第 1期20)